16年目からのMATE研究会活動

16年目からのMATE研究会活動

昭和六〇年からの四年間は、従来にまさる激動の時代であった。急激な円高が始まり、日本経済は従来の輸出指向型から、世界経済の場で重要な責任を果たすべき大きな転換期を迎えた。こうしたなかで、各方面では多くの人々が悩み、考え、そしてチャレンジした。 環境変化は、MATE研究会の活動にも影響を及ぼし、本研究会は試行錯誤を繰り返しながら現在に至っている。ここで、この四年間の主な活動を各年度別に振り返ってみる。

昭和60年度

大阪科学技術センターで、異業種交流活動を始めて一六年目、昭和六〇年度の参加者は過去最高の五八名を数え、一つの頂点を形成した。 

活動の面では、『異業種企業が創り合うー――技術・市場の変化予測と高付加価値化対策』のメインテーマのもとに、充実した定例研究会が開かれた。 それに加え、「経営トップ層」「若手経営者層」 「技術開発担当重役層」の三つの階層別分科会を設置。これによって、各階層が持つ悩みや課題が赤裸々に報告され、より有益な情報交換が実現した。 また12月には、会員コミュニケーション紙「MATE通信」を創刊。

 この頃、中小企業事業団が主催する技術交流プラザをはじめ、民間諸団体や金融機関等が結成する異業種交流グループ活動が、全国的な広がりを見せていた。 こうしたなかで、MATE研究会による「異業種交流15年」誌が発行され、異業種交流のガイドブック的役割を果たしたことは特筆すべきであろう。

この年、MATE研究会の活動・運営を研修しようと、各地からの来訪者が相次いだ。また、他の異業種ダループとの交流では、10月に、奈良県異業種交流研究会と合同研究会を実施した。

 同年六月、中小企業事業団が音頭をとり、全国各地に散在する異業種交流グループの組織を一元化し、有機的な連携を図るため、「全国異業種交流協議会」の設立が企画された。要請に基づき、その設立準備段階から、棚滞日佐司代表幹事(㈱棚澤ハ光社社長)を準備委員として派遣。設立に向けての協力を行った。九月二六日、設立総会が開かれ、棚澤代表幹事は副会長に就任。

昭和61年度

急激な為替相場の変動や国際貿易摩擦などによって、わが国の産業構造は、輸出指向型からの大きな転換を迫られた。企業環境は中小企業にとつても厳しさを増す一方、従来とは異なる発想を持ち、国際化時代に適応する経営戦略の確立が急がれた。 

そして昭和61年度のメインテーマは、『国際化時代に適応した経営戦略の確立』。メインテーマに基づき、定例研究会では主として、国際的な経済・経営の専門家による講演を実施。さらにメンバー各社のうち、海外展開を積極的に図っている企業に、具体的な体験談の事例発表を求めた。発表の一つに、吉川製油㈱吉川社長によるシンガポール進出の事例があつたが、同氏からはその後も引き続き、工場完成までの進捗状況を聞くことができ、生きた事例として大いに参考となった。これがきっかけになり、昭和六三年二月、MATE研究会の海外視察研修会にて現地を訪問。 

また国際的なものとしては、七月、アジア生産性機構の招きで来日された韓国のドクター、ソン・ヒエ・キム氏を囲み、特別分科会として懇談会を実施した。

 60年度より始まった分科会は、階層別からテーマ別に「経営問題分科会」「市場開発分科会」「技術開発分科会」の三分科会となり、活動の充実を図った。 毎月発行される「MATE通信」は、紙面もバラエティに富み、会員間のコミュニケーションに大きな役割を果たした。

昭和62年度

昭和62年度は、『異業種の独創的な発想を交流し合う場』というキャツチフレーズのもと、メンバー相互の交流に重きを置いた。

メインテーマは、『異業種・異業態の経営環境変化とその対応策を学び、新しいニーズ・シーズを摸索する』。 

月例研究会では、メインテーマに基づき、メンバー各社の経営環境が発表されたほか、メンバーには存在しない業種の経営者を招いて講演を実施。 さらにメインテーマの発表については、参加各社から『わが社を取り巻く経営環境の変化予測とその活用策・対応策』という内容の統一フォームによる経営資料を提出していただき、各企業における経営戦略、技術・市場開発戦略の根幹に迫る貴重な資料として重宝された。

 前年の春、男女雇用機会均等法が成立したが、これに関連する話題は分科会でも出された。例えば、『今後の市場を考えるうえで、女性の”見る眼”の重要性』とか、『これからの経営で戦力となる女性の人材』などといったもの。このため、分科会と自由課題研究会で、メンバー企業に講演を依頼。とりわけ、白光金属工業㈱(現・白光㈱)海外事業部の浜西さん、ならびに杉浦さんの発表は印象深かった。 

宿泊研修会では、高齢化社会に向けての重要な視点となる国際健康村「アクティバ」の見学や、「シルバービジネス」を考える機会を持っへ自由課題研究会のなかでは、『MATE研究会での共同事業の可能性』について討議され、会員間の交流や情報交換も活発に行われた。

昭和63年度

多様化・多角化し、時代は急速に変化していく。こうしたなかで、異業種の交流を通じて、柔軟で新しい物の見方、思考、発想を生かそうということから、昭和63年度のメインテーマは、『技術と市場のニーズ・シーズを先取りし、環境変化への積極的な対応を図る』となる。

 定例研究会では、主として、メンバー企業における環境変化への対応を、昨年度作成した統一資料をもとに発表。

 四月には、中小企業庁の最重要施策である『中小企業の融合化』の促進を図るため、融合化法が施行。異業種企業の連携による共同開発、共同事業を幅広く支援する制度が整備された。 

こうした環境のもと、新たな試みとして、従来の分科会活動を「市場開発分科会」「技術開発分科会」の二つに絞り、継続して、テーマをより深く掘り下げることを決定する。市場開発分科会では、『ドライビール戦争を考える』というテーマで、㈱大広の中野順一氏が三回にわたり講師を務めた。前年から、市場の大転換期を迎えたビール業界にスポットを当て、マーケティング戦略やマーケット・セグメ最後につけ加えてンテーションの重要性について、詳細な資料に基づく講演と討論を重ねる。 

一方、技術開発分科会では、民間の技術移転を推進する新技術開発事業団から、同事業団が保有する技術シーズを紹介していただき、かねがね議論を進めてきた研究会として行うべき共同開発・共同事業の可能性の第一歩を踏みだした。紹介のあった各種の技術斡旋課題のうち、共同実施の可能性があるものとして、排水処理の簡易な濾過装置である「流出管付き繊維状球体」に的を絞り、その実演と説明会を開催。以後、三回にわたって検討が加えられ、その後、「マリモプロジエクト」が結成される。 

また11月には、特別企画として、シンガポール、ジャカルタ方面への海外視察研修会を行った。現地へ進出したメンバー企業を訪問し、非常に実り多い研修旅行であった。 会員間における交流も、前年度を上回る活発なものとなつた。

昭和60年からの歩みに付け加えて

以上のほか、継続的に行われたものとして、「企業見学会」がある。この見学会はメンバー企業を訪問して、ただ説明を聞くだけでなく、見学した側も、異分野の目から見た工場の工程管理などについて、改善に役立つ意見や感想をアンケート形式で提出する。見学会は年に数回必ず実施され、一見地味だが、MATE研究会の重要な活動の一つになつている。

 二一世紀に向けて、関西新空港をはじめ、関西では種々のプロジェクトが進行中であるが、こうしたプロジェクトの勉強会も、科学技術センターの協力を得て実施している。今後の経営環境を考えていくうえで、こうした勉強会は極めて有意義であろう。
 このほかにも、メンバー間における具体的な交流が種々あるが、これらについては、第三章 「父流から生まれたもの」を参照願いたい。

(以上20周年記念誌”異業種交流20年”より)

>>MATE研究会の歩み